「世にも奇妙な物語」の思い出
東北新社時代に「BLACK ROOM」(01)、「ママ新発売」(01)、
「マンホール」(02)の3本をプロデュースしました。きっかけは、
SMAPの特別編(01)で、木村さんのエピソードを、石井克人監督でや
りたいという話がSMAPのマネージャーの飯島さんからありました。
石井監督は、すぐさまオリジナルの脚本を書いて提出。フジテレビと
木村さんと石井監督で打合せがあって、フジテレビのプロデューサー
の石原さんがこれはどうなるのか?と言っていました。共演者は樹木
希林さんと志賀廣太郎さん。樹木さんは、本木雅弘さん(樹木さんは
義理の母)のプッシュがあって実現しました。本木さんは石井監督の
CMに出演していたので彼の実力を知っていたからです。フジテレビは
樹木さんが出演することに驚き、テレビ局とタレントの微妙な関係を
垣間見た感じがしました。志賀さんは、まだあまり有名でなく、この
作品でブレイクしました。また、主人公の妹?役の我修院達也さんは
石井監督の「鮫肌男と桃尻女」でブレイクしたので、監督にお願いし
て、脚本を直して出てもらうことにしました。
これに味をしめて、共同テレビの稲田プロデューサーから、CMディ
レクターの中島哲也さんでできないかと提案がありました。中島さんが
映画「下妻物語」を撮る前です。中島さんのプロットは異常で、これは
採用されないだろうと思っていたら、前出のフジテレビの石原さんから
「たまには、こういうものがあってもいいのでは?」とOKが出ました。
正直これは大変なことになったと思いました。まずキャスト、中島監督
は、主人公は、最初、小泉今日子さんを想定していました。その後、監
督は、ジュディマリのYUKIさんを提案、みんなで却下。当時、私がプロ
デュースした化粧惑星のCMに出ていたともさかりえさんが抜群に上手か
ったので、監督に提案しました。他はぐっさん(山口智充さん)、YOU
さん、宮藤官九郎さん、麻生祐未さんなど、異色なキャスティングです
宮藤さんは、中島監督が若い人に最近人気のある演劇人は?と聞い
て、ほとんど実績も知らずに決めました。当初3日間で撮影する予定で
したが、初日の進行で、絶対予定通りに終わらないと腹を括り、キャス
トが集合するシーンだけを先に撮影して、単独出演のカットは、それぞ
れのスケジュールを調整してもらって、翌週に3日間かけて撮影すること
にしました。それでも全て徹夜でした。オンエア後、週刊誌の取材やいろ
んな事務所のマネージャーさんが会いに来ました。
「マンホール」の監督の山内健司さん(CM「U.F.O仮面ヤキソバン」
が有名)は、ある程度自分の作品を管理できる人だったので、上記の2本
ほど苦労せずに作ることができました。
「ママ新発売」は、自分史上、もっとも大変だった仕事の3本のうち
の1本です。(他の2本は、木村拓哉さんのJRAのCM、SMAPのドラマ
「虎とライオンと5人の男」)。今やったら、死んでいると思います。
最近、当時のフジテレビの編成だった人から、谷口さんなら何とかなる
だろう、と思っていたという話を聞いてかなりズッコケました。「世に
も」は、かつて実験的な作品が多く、名作が多いです。映画監督や、様
々なクリエーターがチャレンジしていました。しかし、CM業界からのチ
ャレンジは、最近、自分がプロデュースした「CITY LIVES」までの23
年間、わずかに石井監督の「水を預かる」位しかなく、愕然としました。
なぜ、CMの制作者はこの枠に挑戦しなかったのか?自分が特別なのか?
もちろん理由はいろいろ考えられますが、そもそもクリエイティブとい
うものはそういう事情を突破できる唯一無二の手段ではないかと思いま
す。何度も言いますが、熱量×戦略が必要だと思います。
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